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■河川音響トモグラフィーを用いた河川流量モニタリングとは
河川音響トモグラフィーシステム(Fluvial Acoustic Tomography System、以下FATSと称する)は、感潮河川において流量と同時に断面平均塩分を測定できることから、河口域の淡水流量をも推定することができ、沿岸域の水環境の数値モデルの精度向上が期待できます。
低水時から洪水時までの自動連続流量測定が可能なFATSは、符号化された擬似ランダム信号M系列の送受信とGPS衛星のクロック信号を利用して、超音波の伝播時間の高精度計測ができ、感潮域を含む様々な河川流量の自動計測を可能にする強力な流量観測法になることが期待されます。
■背景
河川流量は、治水・利水、河川環境、水資源管理などを考える上で重要な基本水文量です。このことから、低水時から洪水時までの一連の河川流量を、省力的かつ安全確実に測定する方法が求められています。
流速測定に比べて水位測定の方が容易なことから、最も広く用いられているのが流量を水位から間接的に推定するH-Q法です。しかしこの方法は、感潮域のように水位から流量が一義的に決まらない場合には用いることができません。また直接的に流量を求める方法として、ADCP(音響流向流速計)、超音波流速計などがありますが、スポット的な観測に限られ、連続的に長期間、断面平均流速を測定するのは容易ではありません。
従来のADCPを用いた流量観測の様子
新開発した河川音響トモグラフィーシステム
設置場所(左)と設置状況(右)
そこでこれらの欠点を克服するために、広島大学大学院工学研究科の川西准教授と金子教授、水環境モニタリング有限責任事業組合によって開発された感潮域を含む様々な河川流量観測を可能にする河川音響トモグラフィーシステム(FATS)を共同で実用化いたしました。(特許出願中)
■FATSの測定原理
横断面を覆う音線群を利用して断面平均流速を計測
長さLの音線に沿う平均音速、平均流速を
cm
、
um
とすると超音波の上流側から下流側への伝播時間
t1
、下流側から上流側への伝播時間
t2
は次式で得られます。
cm
、
um
を求めると
ここで
●
流量の測定
河床形状の測量結果と水位から求めた、音線に沿う断面積
Am(h)
とFATSで測定された音線に沿う平均流速
um
から、流量を次式で求めることが出来ます。
■FATSの特徴
●
既往の測定方法とは異なり、FATSは刻々と変化する流速をリアルタイムに測定するシステムであるため、
流量の長期的なモニタリングが可能
です。
●
FATSは横断面を覆うような音線を利用するため、
流速分布に関する較正係数を必要とせず、断面平均流速を求めることができます
。
●
符号化された擬似ランダム信号であるM系列との相関処理を施すことにより、SN比の飛躍的な改善が可能となり、
洪水時の強い雑音下でも流量観測を行うことができます
。
■FATSのシステムブロック図
■FATSの仕様
■観測事例と結果
音響局設置の様子
FATSの音響局から発射される超音波は、水面と河床を導波管のように伝播するため、礫床河川のような河川では超音波が河床の礫によって反射して、上手く受信器に伝播しない可能性がありました。しかし図1及び図2 にも示すように、礫床河川である広島県三次市を流れる江の川での実証試験(2010年10月)の結果、高いSN比を保持し、自動連続流量測定が問題ないことを確認できました。
図1.礫床河川での流量観測結果
江の川(三次市)流量の計測例(灰塚ダムのフラッシュ放流を含む)
図2.江の川フラッシュ放流観測結果
また、同じく広島市内を流れる大田川放水路での観測結果(2009年6月〜8月)を図3.に示します。これによれば、FATSの連続測定結果は、低・平水時、洪水時ともに、赤点で示したADCPの測定値や青点の浮子観測データと良く一致しており、FATSの測定値は妥当なものであると判断できます。
図3.太田川放水路(広島市)での流量観測結果